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ヒストン2B-GFP保持の解析により、分裂の遅い造血幹細胞が出現した

Nature Biotechnology 27, 1 doi: 10.1038/nbt.1517

造血幹細胞(HSC)は、急速に分裂している細胞を標的とする細胞毒性傷害に抵抗性を示すことから、頻繁には分裂しないと考えられており、チミジン類似化合物である5-ブロモデオキシウリジン(BrdU)などの標識を保持すると推測されている。しかし、BrdUの保持は、HSCのマーカーとして高感度なものでも特異的なものでもない。本論文では、マウスで一過的にトランスジェニック発現させたヒストン2B(H2B)−緑色蛍光タンパク質(GFP)融合タンパク質が、BrdUとの比較で標識保持研究に関して複数の点で優れていることを示す。それは、事実上すべてのHSCでH2B-GFPが迅速に誘導されること、標識強度が高いこと、および標識保持細胞の追跡研究が可能であることなどであり、それによって細胞分裂歴の分析精度が向上する。厳密なマーカーの組み合わせ(LK+S+CD48CD150+)で明らかにされるHSCのH2B-GFP希釈の数学的モデル化により、その増殖速度には予期せぬ不均一性のあることが示され、HSCの約20%は分裂速度がきわめて低い(1日あたり0.8〜1.8%以下)ことがわかった。

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