細胞成分のDMR(dynamic mass redistribution=動的総体的再分布)に基づく標識不要のバイオセンサー技術は、生細胞内のGPCRシグナル伝達をリアルタイムで複雑な光学的「フィンガープリント」に変換することが期待されている。本論文では、標識不要の反応を規定する細胞機構をマッピングする方法を紹介し、DMR法を現在のGPCR薬物探索の標準技術である従来型のセカンドメッセンジャー検定法と比較する。DMR測定の包括性によって可能になることとしては、(i)全4種類のGタンパク質シグナル伝達経路でのGPCR機能を探索すること(既存のほかの大半の検定法用プラットフォームでは困難)、(ii)初代ヒト細胞であっても複雑なGPCRシグナル伝達パターンをこれまでにない精度で解析すること、(iii)ヘテロ三量体Gタンパク質を複雑な光学的フィンガープリントのトリガーとして明確にすること、(iv)GPCRのこれまで知られていなかった特性を明らかにすること、という4点が挙げられる。今回得られた結果は、 DMR法が、新規機構を有する薬物の発見にとどまらず、システム生物学およびシステム薬理学にも大きな影響を及ぼすことを示唆している。