Research Abstract
認知症と関連するβシヌクレイン変異の1つはマウス脳で発現させた際に神経変性を引き起こす
本論文では、DLBと関係付けられているP123H βSを発現するトランスジェニック(tg)マウスは進行性の神経変性を発症することを報告する。
A -synuclein mutation linked to dementia produces neurodegeneration when expressed in mouse brain
2010年11月2日 Nature Communications 1 : 110 doi: 10.1038/ncomms1101
αシヌクレイン(αS)の遺伝子変異の発見は、パーキンソン病やレビー小体型認知症(DLB)のようなαシヌクレイノパチーの発生病理の解明に大きく寄与 した。これに対して、βシヌクレイン(βS)の変異に対してはあまり注意が払われてこなかった。本論文では、DLBと関係付けられているP123H βSを発現するトランスジェニック(tg)マウスは進行性の神経変性を発症することを報告する。この変性は、軸索腫大、アストログリオーシスおよび行動異 常などを特徴とするが、記憶障害のほうが運動障害よりも顕著である。さらに、P123H βS tgマウスは、αS tgマウスとの交配により神経変性表現型が大幅に増強されたが、αSノックアウトマウスとの交配ではこのような増強はみられなかった。これらの結果は、 P123H βSは病原性で、病原性αSと協調的に働いてマウス脳での神経変性を引き起こすことを示唆しており、P123H βSが家族性DLBの病因の1つであることを示している。散発性のαシヌクレイノパチーでβSが神経突起病変の病因となるとすれば、βSの変化は、さまざ まなαシヌクレイノパチーの病因にかかわっている可能性がある。
- 東京都神経科学総合研究所
- 埼玉医科大学ゲノム医学研究センター
- 農業生物資源研究所
- カリフォルニア大学サンディエゴ校(米国)
- カリフォルニア大学サンディエゴ校(米国)
- カリフォルニア大学サンディエゴ校(米国)
- カリフォルニア大学サンディエゴ校(米国)
- カリフォルニア大学サンディエゴ校(米国)
- ラディ小児病院(米国サンディエゴ)
- 東京大学大学院医学系研究科
The discovery of α-synuclein (αS) mutations has made a major contribution to the understanding of the pathogenesis of α-synucleinopathies such as Parkinson’s disease and dementia with Lewy bodies (DLB). In contrast, less attention has been paid to β-synuclein (βS) mutations. In this paper, we show that transgenic (tg) mice expressing DLB-linked P123H βSdevelop progressive neurodegeneration, as characterized by axonal swelling, astrogliosis and behavioural abnormalities, with memory disorder being more prominent than motor deficits. Furthermore, cross-breeding of P123H βStg mice with αStg mice, but not with αSknockout mice, greatly enhanced neurodegeneration phenotypes. These results suggest that P123H βSis pathogenic and cooperates with pathogenic αSto stimulate neurodegeneration in mouse brain, indicating a causative role of P123H βSin familial DLB. Given the neuritic pathology of βSin sporadic α-synucleinopathies, it appears that alteration of βScan contribute to the pathogenesis of a broad range of α-synucleinopathies.