単細胞から個体レベルまでの高速イメージングを可能にする発光タンパク質
Luminescent proteins for high-speed single-cell and whole-body imaging
2012年12月11日 Nature Communications 3 : 1262 doi: 10.1038/ncomms2248
蛍光タンパク質は生物学研究に革命をもたらした。しかしながら、励起光照射が必須であるため、あらゆる組織中で生じる生命現象の観察に普遍的に適用することができなかった。一方、化学発光は励起光を必要としないが、既存の化学発光プローブからの発光シグナルは微弱すぎるため、蛍光観察と同程度のレベルで観察することができなかった。ここで我々は、現在までで最も明るい発光タンパク質、Nano-lantern(ナノ-ランタン)を開発したことを報告する。このタンパク質は、改変型ウミシイタケルシフェラーゼとヴィーナス蛍光タンパク質の融合タンパク質であり、高効率に生物発光共鳴エネルギー移動が生じるように設計されたものである。ナノ-ランタンにより、生細胞中におけるオルガネラなどの構造物を蛍光と同程度のクオリティーで実時間観察することが可能になった。また、ナノ-ランタンにより自由に動き回る脱毛していないマウス体内の腫瘍組織を高感度に検出することが可能になった。我々はまた、ナノ-ランタンを基に、Ca2+、環状アデノシン一リン酸、およびアデノシン5′-三リン酸の可視化が可能な機能指示薬を開発し、蛍光指示薬が使用できない環境下において、これらの生理活性物質の動態をイメージングすることに成功した。これらの発光タンパク質は、動物や植物においてこれまで観察できなかった単細胞、器官、および全身レベルでの生物現象の可視化を実現するであろう。
齊藤 健太1,2, Y.-F. Chang1, 堀川 一樹3, 初谷 紀幸1,4, 樋口 ゆり子5,6, 橋田 充5, 吉田 裕2, 松田 知己1,2, 新井 由之1,2 & 永井 健治1,2,4,6
- 大阪大学 産業科学研究所 生体分子機能科学研究分野
- 北海道大学 電子科学研究所
- 国立遺伝学研究所 新分野創造センター
- 北海道大学先端的光イメージング研究拠点形成プログラム
- 京都大学大学院 薬学研究科
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