つがいメスとの交信によってつがいオスが行う新生仔回収行動
マウスの親としての責任は、通常、仔マウスの母親が果たしている。本研究においては、母親マウスが仔から引き離されると、配偶相手の雄に超音波発声を行い、それに応じた雄が仔マウスを養育することが明らかになった。
Displays of paternal mouse pup retrieval following communicative interaction with maternal mates
2013年1月8日 Nature Communications 4 : 1346 doi: 10.1038/ncomms2336
母親のケアについての知見に比べて、父親のケアについての情報は非常に少ない。今回、実験用マウスで、育児未経験の繁殖用オスが、自発的にではなく、新生仔群から隔離された母親の発する信号に従って母親類似のケア(新生仔の回収)を行うことがわかった。この相互作用のあいだ、つがいのメスはオスに向かって38キロヘルツ超音波発声を行う。しかし、この信号がないか、つがいのメスがいない場合は、オスは5分以内に仔を回収することはない。また、メスの匂いもオスに同等の効果をもたらす。これらの結果から、マウスでは、つがいメスはオスに対して、ケアを行うよう聴覚や臭覚両方の信号を送っていることがわかる。この新研究手法は、交信によって誘発される父性ケアを実行中の、親脳の状態を解析するのに有効だろう。
Hong-Xiang Liu1,2, Olga Lopatina1,2,3, 東田 知陽2, 藤本 宏子2, Shirin Akther2, Alena Inzhutova2,3, Mingkun Liang2, Jing Zhong2, 辻 隆宏2, 吉原 亨1,4,5, 角 康平2, 石山 みず穂2, Wen-Jie Ma2, 尾崎 光紀6, 八木谷 聡6, 横山 茂1,2,4, 向田 直史7, 櫻井 武8, 堀 修9, 善岡 克次10, 平尾 敦11, 加藤 将夫12, 石原 克彦13, 加藤 一郎14, 岡本 宏15, Stanislav M. Cherepanov3, Alla B. Salmina3, 平井 宏和16, 浅野 雅秀1,5, David A. Brown17, 長野 勇6 & 東田 陽博1,2,3,4
- 金沢大学 21世紀COEプログラム「発達・学習・記憶と障害の革新脳科学の創成」
- 金沢大学大学院 医薬保健学総合研究科 脳細胞遺伝子学
- クラノヤルスク医科大学(ロシア)
- 金沢大学 子どものこころの発達研究センター
- 金沢大学 学際科学実験センター
- 金沢大学大学院 自然科学研究科
- 金沢大学 がん進展制御研究所 分子生体応答研究分野
- 金沢大学大学院 医薬保健学総合研究科 分子神経科学・総合生理学
- 金沢大学大学院 医薬保健学総合研究科 神経分子標的学
- 金沢大学 がん進展制御研究所 シグナル伝達研究分野
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- 川崎医科大学 免疫学教室
- 富山大学大学院 医学薬学研究部 生化学
- 東北大学大学院 医学研究科
- 群馬大学大学院 医学系研究科 脳神経病態制御学
- ロンドン大学(英国)