Research Abstract
マウスではGRK6欠失がアポトーシス細胞の除去障害による自己免疫疾患を引き起こす
マクロファージによるアポトーシス細胞の除去は、組織の恒常性にとって重要だ。本研究で、仲矢道雄たちは、アポトーシス細胞の貪食の調節におけるGRK6の役割を明らかにし、GRK6を欠損したマウスに自己免疫疾患と脾臓への鉄蓄積が起こることを示した。
GRK6 deficiency in mice causes autoimmune disease due to impaired apoptotic cell clearance
2013年2月26日 Nature Communications 4 : 1532 doi: 10.1038/ncomms2540
アポトーシスを起こした細胞の効率よい取り込みは組織の恒常性維持に重要である。食細胞がアポトーシス細胞の表面に提示される「イートミー(私を食べて)」シグナルを認識すると、取り込みのために食細胞の細胞骨格の再編成がRac1の活性化を介して誘導される。しかし、Rac1活性化を引き起こす細胞内シグナル伝達カスケードについてはほとんどわかっていなかった。本論文では、Gタンパク質共役受容体キナーゼ6(GRK6)がアポトーシス細胞の除去にかかわっていることを明らかにした。GRK6はGlT1と協同的に働いてRac1を活性化し、既知のDOCK180/ELMO/Rac1およびGULP1/Rac1取り込み経路とは無関係にアポトーシス細胞の取り込みを促進した。GRK6を欠失するマウスは、アポトーシス細胞の取り込みがうまく行えないため、自己免疫疾患を発症した。また、F4/80+マクロファージが老化赤血球の除去を行う赤脾髄での鉄貯蔵量が、GRK6欠失マウスでは増加していた。今回の結果は、これまで知られていなかったGRK6のアポトーシス細胞除去の調節に果たす役割と、免疫および鉄の恒常性におけるその基本的重要性を明らかにしている。
仲矢 道雄1, 田島 充1, 小迫 英尊2, 仲矢 丈雄3, 橋本 明子1, 渡 健治1, 西原 弘朗1, 大場 三奈1, 小宮 詩織1, 谷 直紀2, 西田 基宏1, 谷口 寿章2, 佐藤 陽治4, 松本 満5, 津田 誠6, 黒田 雅彦3, 井上 和秀6 & 黒瀬 等1
- 九州大学大学院 薬学研究院 薬効安全性学分野
- 徳島大学疾患酵素学センター 疾患プロテオミクス研究部門
- 東京医科大学 分子病理学講座
- 国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部
- 徳島大学疾患酵素学センター 免疫病態研究部門
- 九州大学大学院 薬学研究院 薬理学分野
Efficient engulfment of apoptotic cells is critical for maintaining tissue homoeostasis. When phagocytes recognize ‘eat me’ signals presented on the surface of apoptotic cells, this subsequently induces cytoskeletal rearrangement of phagocytes for the engulfment through Rac1 activation. However, the intracellular signalling cascades that result in Rac1 activation remain largely unknown. Here we show that G-protein-coupled receptor kinase 6 (GRK6) is involved in apoptotic cell clearance. GRK6 cooperates with GIT1 to activate Rac1, which promotes apoptotic engulfment independently from the two known DOCK180/ELMO/Rac1 and GULP1/Rac1 engulfment pathways. As a consequence, GRK6-deficient mice develop an autoimmune disease. GRK6-deficient mice also have increased iron stores in splenic red pulp in which F4/80+ macrophages are responsible for senescent red blood cell clearance. Our results reveal previously unrecognized roles for GRK6 in regulating apoptotic engulfment and its fundamental importance in immune and iron homoeostasis.