Research Abstract
γセクレターゼの基質選択性と活性の阻害には基質の細胞外ドメインが重要である
γセクレターゼ阻害剤は、アルツハイマー病の治療薬候補として研究されているが、副作用のために使用が制限されている。舟本らは、γセクレターゼが短い外部ドメインを持つ基質を選択的に切断することと、これらの外部ドメインを用いた阻害剤がマウスにおける疾患様病理を低減することを明らかにした。
Substrate ectodomain is critical for substrate preference and inhibition of γ-secretase
2013年10月9日 Nature Communications 4 : 2529 doi: 10.1038/ncomms3529
γセクレターゼが基質を認識する機構の解明は、アミロイドβタンパク質(Aβ)産生の基質特異的阻害法を確立するための重要なステップである。だが、γセクレターゼは多様なタンパク質を基質とするプロテアーゼであって、基質特異的な阻害が難しいことが広く知られている。本論文では、γセクレターゼが基質の細胞外ドメインの長さを区別して、短い細胞外ドメインを持つ基質を選択的に捕捉し、切断することを明らかにした。また、CDCYCxxxxCxCxSCというモチーフを持つペプチド群がC99のアミノ末端に結合して、Aβ産生を基質特異的な様式で阻害することも分かった。このようなペプチド群はβセクレターゼによるAPP切断をも抑制するが、同じくβセクレターゼ基質であるシアル酸転移酵素1の切断は阻害しなかった。最も重要なのは、このようなペプチドのマウス腹膜内投与によって脳内Aβ濃度が大幅に低下したことである。この報告はγセクレターゼの基質選択性と選択機構に関する直接的な証拠を示し、C99の細胞外ドメインがアルツハイマー病に対する基質特異的抗Aβ療法の有力な標的であることを明らかにした。
舟本 聡1, 佐々木 亨2, 石原 聖子1, 延原 美香1, 中野 将希1*, 高橋 美帆1, 斉藤 貴志3, 角田 伸人4, 宮坂 知宏1, 西川 喜代孝1, 西道 隆臣3 & 井原 康夫1,4
- 同志社大学大学院 生命医科学研究科
- ペプチドリーム株式会社
- 理化学研究所 脳科学総合研究センター
- 同志社大学大学院 脳科学研究科
*現所属先:京都大学大学院 生命科学研究科
Understanding the substrate recognition mechanism of γ-secretase is a key step for establishing substrate-specific inhibition of amyloid β-protein (Aβ) production. However, it is widely believed that γ-secretase is a promiscuous protease and that its substrate-specific inhibition is elusive. Here we show that γ-secretase distinguishes the ectodomain length of substrates and preferentially captures and cleaves substrates containing a short ectodomain. We also show that a subset of peptides containing the CDCYCxxxxCxCxSC motif binds to the amino terminus of C99 and inhibits Aβ production in a substrate-specific manner. Interestingly, these peptides suppress β-secretase-dependent cleavage of APP, but not that of sialyltransferase 1. Most importantly, intraperitoneal administration of peptides into mice results in a significant reduction in cerebral Aβ levels. This report provides direct evidence of the substrate preference of γ-secretase and its mechanism. Our results demonstrate that the ectodomain of C99 is a potent target for substrate-specific anti-Aβ therapeutics to combat Alzheimer’s disease.