Research Abstract

超微細構造の原子ビーム分光に向けた反水素源

A source of antihydrogen for in-flight hyperfine spectroscopy

2014年1月21日 Nature Communications 5 : 3089 doi: 10.1038/ncomms4089

反水素は、陽電子と反陽子が結合したもので、最も単純な反原子である。これに対応する水素は、物理研究において最も詳しく調べられ、最もよく理解されている系の1つである。この両方の系を高精度で比較すれば、CPT対称性を高感度で検証できる。CPT対称性は、素粒子物理の標準模型における最も基本的な対称性である。違いが少しでもあれば、CPT対称性の破れの証拠となり、従って新しい物理を示すと考えられる。今回我々は、原子ビーム分光法向けの、カスプトラップを用いた反水素源の開発について報告する。合成領域から2.7 m下流の、擾乱を与える残留磁場が小さい場所で、合計80個の反水素原子が明確に検出された。これは、ラビ型ビーム分光法を用いる反水素原子の基底状態超微細分裂の高精度分光への、大きな一歩である。

黒田 直史1, ステファン・ウルマー2, ダニエル・ムルタ3, シモン・ヴァン・ゴルプ3, 永田 祐吾3, マルティン・ディアマイアー4, シルケ・フェダーマン5, マルコ・レアリ6,7, クロエ・マルブルノ4*, ヴァレリオ・マスカーニャ6,7, オスヴァルト・マシチェック4, 満汐 孝治8, 水谷 丈洋1, 毛利 明博3, 長濱 弘季1, 大塚 未来1, バリント・ラディッチ3, 櫻井 翔太9, クレメンス・ザウアーツォップ4, 鈴木 謙4, 田島 美典1, 鳥居 寛之1, ルカ・ヴェントゥレッリ6,7, バーバラ・ヴュンシェック4, ヨハン・ツメスカル4, ニコラ・ツルロ6,7, 檜垣 浩之9, 金井 保之3, エヴァンドロ・ロディ・リッツィーニ6,7, 長嶋 泰之8, 松田 恭幸1, エバハルト・ヴィトマン4 & 山崎 泰規1,3

  1. 東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻
  2. 独立行政法人理化学研究所 Ulmer 国際主幹研究ユニット
  3. 独立行政法人理化学研究所 原子物理研究室
  4. オーストリア科学アカデミー ステファンマイヤー研究所
  5. 欧州原子核研究機構(CERN)(スイス)
  6. ブレシア大学(イタリア)
  7. INFN (イタリア国立核物理学研究所)
  8. 東京理科大学 理学部
  9. 広島大学大学院 先端物質科学研究科

    現所属先:欧州原子核研究機構(CERN) (スイス)

Antihydrogen, a positron bound to an antiproton, is the simplest antiatom. Its counterpart—hydrogen—is one of the most precisely investigated and best understood systems in physics research. High-resolution comparisons of both systems provide sensitive tests of CPT symmetry, which is the most fundamental symmetry in the Standard Model of elementary particle physics. Any measured difference would point to CPT violation and thus to new physics. Here we report the development of an antihydrogen source using a cusp trap for in-flight spectroscopy. A total of 80 antihydrogen atoms are unambiguously detected 2.7 m downstream of the production region, where perturbing residual magnetic fields are small. This is a major step towards precision spectroscopy of the ground-state hyperfine splitting of antihydrogen using Rabi-like beam spectroscopy.

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