哺乳類頭蓋骨のヘテロクロニー(形成タイミングの進化的改変)は、モジュール的進化および頭蓋発生様式と脳サイズの相関の存在を明らかにする
Mammalian skull heterochrony reveals modular evolution and a link between cranial development and brain size
2014年4月4日 Nature Communications 5 : 3625 doi: 10.1038/ncomms4625
頭蓋骨を構成する多数の骨パーツは、同時期に形成が開始されるわけではなく、また、その発生スケジュールは有羊膜類の様々な種間でも異なっている。本研究では、主要な哺乳類とその他の有羊膜類を網羅する、134種についての胚期の骨化順序を報告する。この網羅的なデータから、頭蓋骨のヘテロクロニー(形成タイミングの進化)および哺乳類の最終共通祖先の頭蓋骨の発生の再構築、そしてモジュール的進化の存在検証が可能となった。我々は、骨パーツの骨化のタイプ(膜性あるいは軟骨性)により、骨パーツがそれぞれ別個の進化モジュールに統合され、それが頭蓋の骨パーツのヘテロクロニーを拘束することを発見した。一方で、上後頭骨などの、いくつかの脳頭蓋の骨パーツはこの拘束から進化的な自由度を示す。特に、哺乳類の最終共通祖先の頭蓋骨の発生の統計的再構築から、脳頭蓋の骨化タイミングは、哺乳類の最終共通祖先で、かなり早まったことが示された。また有羊膜類全体で、上後頭骨の形成タイミングと相対脳サイズとの間には相関があることが確認された。これらのことから我々は、哺乳類における頭蓋のヘテロクロニーは、全体として保守的なモジュール的進化をしながらも、大脳化と連動して起きてきたと結論づける。
小薮 大輔1,2, Ingmar Werneburg1, 森本 直己3, Christoph P. E. Zollikofer3, Analia M. Forasiepi1,4, 遠藤 秀紀2, 木村 順平5, 大舘 智氏6, Nguyen Truong Son7 & Marcelo R. Sánchez-Villagra1
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- チューリッヒ大学 人類学博物館(スイス)
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