3.8 Vの高電圧を発生するナトリウムイオン電池用鉄系電極材料
A 3.8-V earth-abundant sodium battery electrode
2014年7月17日 Nature Communications 5 : 4358 doi: 10.1038/ncomms5358
リチウムイオン電池は、過去20年にわたって電子機器のポータブル化を先導し、現在ではさまざまなタイプの電気自動車を駆動可能なレベルに達している。しかし、大型用途への展開に伴って、リチウム資源の偏在性と希少性に対する懸念が高まっているため、汎用元素のみからなる高性能蓄電池の実現に努力が向けられるようになった。特に、代表的な汎用元素であるナトリウムと鉄を主体とする電極材料によるナトリウムイオン電池が理想型とされ、その実現のためには、固体中でNaを電荷キャリアとして、Feを酸化還元中心としてそれぞれ可逆的に機能させることが要求される。ところが、これまで提案されてきたナトリウムと鉄を主体とする電極材料は動作電圧が低く、反応速度も遅いため、実用性が議論されることはなかった。今回我々は、これまでの電極材料とは組成も構造も全く異なる新規材料Na2Fe2(SO4)3を発見した。この新規材料は、アルオード鉱物(alluaudite)型骨格を持つ初めての硫酸塩に位置付けられる。Naに対して3.8 V(対リチウム換算で4.1 V)という従来よりもはるかに高い鉄による酸化還元ポテンシャルを示すことから、リチウムイオン電池との互換性が確保され、高エネルギー密度系を実現できる。反応速度も速く、数分以下での充電や放電にも対応する。本発見により、現在のリチウムイオン電池の高エネルギー密度や高出力特性を犠牲にすることなく汎用元素化された画期的な高性能大型蓄電池の実用化が視野に入るとともに、さらなる汎用高機能材料発見の可能性が示された。
プラビール・バルパンダ1,2,3, 大山 剛輔1, 西村 真一1,2, サイチェオン・チュン1 & 山田 淳夫1,2
- 東京大学大学院 工学系研究科
- 京都大学 触媒・電池の元素戦略研究拠点
- インド理科大学院 材料研究センター (印)