細胞および動物におけるTALENやCRISPR/Cas9を用いたドナーDNAのマイクロホモロジー媒介末端結合依存的な挿入
Microhomology-mediated end-joining-dependent integration of donor DNA in cells and animals using TALENs and CRISPR/Cas9
2014年11月20日 Nature Communications 5 : 5560 doi: 10.1038/ncomms6560
ある特異的な配列を標的として切断できるヌクレアーゼを用いたゲノム編集により、相同組換え(HR)を介した遺伝子ノックインが可能である。しかし、ホモロジーアームを含むターゲッティングベクターの構築には労力が必要であったこと、また、細胞種や生物種によってはHR活性が低いことなどから、HRを介したノックイン技術の利用には技術的な障害がある。本論文では、PITCh(Precise Integration into Target Chromosome:標的染色体領域への正確な遺伝子挿入)システムと名付けた、TALEN(transcription activator-like effector nuclease)やCRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeat)/Cas9(CRISPR-associated 9)を用いたマイクロホモロジー媒介末端結合による新しい遺伝子ノックイン技術を紹介する。TAL-PITChと名付けたTALENによる遺伝子挿入は、ヒト細胞および、カイコとカエルを含む動物において外来ドナーDNAを効率的に挿入することができる。さらに、CRIS-PITChと名付けたCRISPR/Cas9による遺伝子挿入は、プラスミドのバックボーン配列を持ち込まずにヒト細胞に適用できることが実証された。以上のように、我々のPITChシステムは、培養細胞だけでなく、無脊椎動物および脊椎動物を含む、さまざまな生物において応用例が期待される。
中出 翔太1, 坪田 拓也2, 坂根 祐人1, 久米 悟士1, 坂本 尚昭1, 小原 政信3, 大門 高明4, 瀬筒 秀樹2, 山本 卓1, 佐久間 哲史1 & 鈴木 賢一1
- 広島大学大学院 理学研究科 数理分子生命理学専攻
- 農業生物資源研究所 遺伝子組換えカイコ研究開発ユニット
- 広島大学大学院 理学研究科 生物科学専攻
- 農業生物資源研究所 昆虫成長制御研究ユニット