大環状特殊ペプチドに基づく人工ヒトMetアゴニスト
Artificial human Met agonists based on macrocycle scaffolds
2015年3月11日 Nature Communications 6 : 6373 doi: 10.1038/ncomms7373
Metとしても知られる肝細胞増殖因子(HGF)受容体は受容体チロシンキナーゼファミリーに属しており、MetがそのリガンドであるHGFと相互作用するとAktやErkなどの下流のキナーゼが関わるさまざまなシグナル伝達経路が活性化される。特に、上記のシグナル伝達カスケードによって引き起こされる生物学的応答を介して、傷害を受けた組織修復を担う等の重要な機能をもつことが知られている。本論文では、Metを活性化する人工大環状特殊ペプチドダイマーの創出を報告した。この研究では、まずMetに結合する大環状特殊ペプチドモノマー(単量体)をRaPID(random non-standard peptide integrated discovery)システムによって取得し、それぞれのモノマーを合理的な設計によってダイマー(2量体)化した。これら大環状特殊ペプチドダイマーは、受容体を2量化することでMetシグナル伝達経路を特異的かつ強力に活性化し、ヒト細胞における分枝管腔形態形成等の多様な細胞応答をHGFと同様のレベルで誘導させることがわかった。本研究では、Metに対する非タンパク質リガンドとしての大環状ペプチドダイマーが極めて有用であることを示しており、その成果はMetを介した再生治療薬の開発だけに留まらず、他の細胞表面受容体を介した治療薬開発への応用も期待できる。
Kenichiro Ito, Katsuya Sakai, Yoshinori Suzuki, Naoya Ozawa, Tomohisa Hatta, Tohru Natsume, Kunio Matsumoto & Hiroaki Suga