微小な腹腔内転移腫瘍をin vivoで可視化するための、β-ガラクトシダーゼを標的とする高感度の蛍光プローブ
Sensitive β-galactosidase-targeting fluorescence probe for visualizing small peritoneal metastatic tumours in vivo
2015年3月13日 Nature Communications 6 : 6463 doi: 10.1038/ncomms7463
蛍光を用いる診断法は、がんをin situで迅速に検出するための手法としてもっとも期待されているもののひとつである。我々は、卵巣がんからの腹腔内転移を可視化するための分子標的として、原発性卵巣がんで過剰発現されるβ-ガラクトシダーゼに注目した。既存の蛍光プローブはこうした目的に適していないことから、我々は細胞膜を通過できるHMRef-βGalを設計した。この化合物は、分子内スピロ環化反応を最適化することで、活性化した際の蛍光が1,400倍を超えるようになっている。HMRef-βGalは、複数の卵巣がん細胞株で細胞内β-ガラクトシダーゼ活性を高感度で検出できることが確認された。in vivoでは、ヒト卵巣がんの腹腔内播種の7種類のマウスモデル(SHIN3、SKOV3、OVK18、OVCAR3、OVCAR4、OVCAR5およびOVCAR8)で、このプローブによって直径が<1mmという小さな転移が可視化された。このプローブは非常に明るいため、転移を肉眼でリアルタイム検出することができる。蛍光内視鏡による転移検出も可能であることが実証された。今回の結果は、卵巣がんの腹腔内転移の蛍光による診断に、このプローブが前臨床的に有用と考えられることをはっきり示している。
Daisuke Asanuma, Masayo Sakabe, Mako Kamiya, Kyoko Yamamoto, Jun Hiratake, Mikako Ogawa, Nobuyuki Kosaka, Peter L. Choyke, Tetsuo Nagano, Hisataka Kobayashi & Yasuteru Urano