シグナルを感知する足場タンパク質JMJD1Aは、SWI/SNFとの結合によって急速に動的クロマチン変化を誘導し、熱産生を調節する
JMJD1A is a signal-sensing scaffold that regulates acute chromatin dynamics via SWI/SNF association for thermogenesis
2015年5月7日 Nature Communications 6 : 7052 doi: 10.1038/ncomms8052
ヒストン3リシン9(H3K9)脱メチル化酵素であるJMJD1Aは、βアドレナリンによって誘導される全身的代謝と体重制御を調節している。今回我々は、褐色脂肪細胞(BAT)において、JMJD1Aの265番目のセリン残基(S265)がプロテインキナーゼA(PKA)によってリン酸化され、これがβ1アドレナリン受容体遺伝子(Adrb1)やその下流にあるUcp1などの標的遺伝子の活性化に重要であることを示した。JMJD1AがPKAによってリン酸化されると、ヌクレオソームリモデリング複合体のSWI/SNFや、DNAに結合したPPARγとの相互作用を増大させる。こうしてできた複合体は、βアドレナリンによって誘導されるJMJD1Aの標的遺伝子への迅速な移動をもたらし、長距離にわたるクロマチンの相互作用と標的遺伝子の活性化を引き起こす。この迅速な遺伝子発現誘導はJMJD1AのS265のリン酸化に依存しているが、脱メチル化酵素活性には依存していない。我々の結果は、BATでの熱産生を調節するためのホルモン刺激によって誘導されるクロマチン動態調節に、JMJD1Aが2つの重要な役割を持っていることを明らかにしている。その1つはJMJD1AがcAMP応答性に標的遺伝子部位に動員されて足場として機能し、長距離にわたるクロマチン相互作用を促進するというものであり、もう1つはジメチル化されているH3K9からメチル基を除去することである。
Yohei Abe, Royhan Rozqie, Yoshihiro Matsumura, Takeshi Kawamura, Ryo Nakaki, Yuya Tsurutani, Kyoko Tanimura-Inagaki, Akira Shiono, Kenta Magoori, Kanako Nakamura, Shotaro Ogi, Shingo Kajimura, Hiroshi Kimura, Toshiya Tanaka, Kiyoko Fukami, Timothy F. Osborne, Tatsuhiko Kodama, Hiroyuki Aburatani, Takeshi Inagaki & Juro Sakai