ヒトのリガンドと受容体が仲介する多細胞間シグナル伝達ネットワークの概要
A draft network of ligand–receptor-mediated multicellular signalling in human
2015年7月22日 Nature Communications 6 : 7866 doi: 10.1038/ncomms8866
多様な種類の細胞や組織の間で行われる細胞間コミュニケーションは、後生動物の機能を厳密に管理することで適切に維持していて、こうしたコミュニケーションは分泌されたリガンドと細胞表面にある受容体の間の相互作用に大きく依存している。今回我々は、144種類のヒト初代細胞の間での細胞間コミュニケーションの全容を示す大規模マップを初めて明らかにした。ほとんどの細胞が数十種から数百種におよぶリガンドと受容体を発現していて、それらが多数のリガンド-受容体経路を介して複雑に接続されたシグナル伝達ネットワークを作り出していることが分かった。また、大規模なオートクリン(自己分泌)シグナル伝達が観察され、それに関わるリガンドや受容体のほぼ3分の2は同系列の細胞上のパートナーと相互作用しているらしいことも明らかになった。また、細胞膜のタンパク質と分泌タンパク質は細胞種に対する特異性がもっとも高く、これらは細胞質に含まれるタンパク質よりも進化的に新しいこと、受容体の大半はペアとなるリガンドよりも先に進化していることが見出された。我々はこのネットワークをユーザーが検索し可視化するための対話型オンラインツールを構築して公開し、さらにこのツールを使えば新規な細胞間相互作用を明らかにできることを実証し、マスト細胞がCSF1-CSF1Rという相互作用ペアを介して単芽球系列の細胞にシグナル伝達を行っていることを予測した。
Jordan A. Ramilowski, Tatyana Goldberg, Jayson Harshbarger, Edda Kloppman, Marina Lizio, Venkata P. Satagopam, Masayoshi Itoh, Hideya Kawaji, Piero Carninci, Burkhard Rost & Alistair R. R. Forrest