A型インフルエンザウイルスに対するワクチンを高収率で得られるウイルスの開発
Development of high-yield influenza A virus vaccine viruses
2015年9月2日 Nature Communications 6 : 8148 doi: 10.1038/ncomms9148
ワクチン接種は感染を防御する最も費用対効果に優れた方法の1つである。培養細胞で増殖させたインフルエンザワクチンは、ヒトでの使用が承認されているが、十分な収率に至らないことが多い。今回我々は、細胞培養で効率よく増殖するワクチンウイルスのバックボーン(インフルエンザウイルスのワクチン抗原として重要なヘマグルチニンとノイラミニダーゼ以外の6つのウイルスRNA分節)を開発する目的で、A/Puerto Rico/8/34(PR8)ウイルスの変異体ライブラリーをスクリーニングした。また、このウイルスのコード領域や調節領域の変異、およびヘマグルチニンとノイラミニダーゼのキメラ遺伝子の検討も行った。これらのスクリーニングから高増殖性に関与する変異を組み合わせることで、効率よく増殖するPR8バックボーンを得ることができた。このPR8バックボーンを用いると、アフリカミドリザル腎臓細胞(Vero細胞)およびマディン・ダービー イヌ腎臓細胞(MDCK細胞)でのH1N1亜型、H3N2亜型、H5N1亜型およびH7N9亜型のワクチンウイルスの力価が改善された。さらに、この高増殖性PR8バックボーンはインフルエンザワクチンの製造に広く使用されているニワトリ受精卵での増殖性も改善されていた。従って、このPR8ワクチンバックボーンは、季節性およびパンデミックのインフルエンザワクチン開発を進展させる。
Jihui Ping, Tiago J.S. Lopes, Chairul A. Nidom, Elodie Ghedin, Catherine A. Macken, Adam Fitch, Masaki Imai, Eileen A. Maher, Gabriele Neumann & Yoshihiro Kawaoka