細菌由来のフェロポルチン相同遷移金属輸送体の外向きおよび内向き開構造
Outward- and inward-facing structures of a putative bacterial transition-metal transporter with homology to ferroportin
2015年10月13日 Nature Communications 6 : 8545 doi: 10.1038/ncomms9545
脊椎動物では、鉄排出輸送体であるフェロポルチンにより、細胞から血漿へFe2+が放出されることで、鉄恒常性が維持されている。フェロポルチンの輸送活性はペプチドホルモンであるヘプシジンによって抑制される。慢性炎症に伴いヘプシジンの発現量は上昇し、血中の鉄の欠乏により貧血が引き起こされる。しかし、フェロポルチンの立体構造の情報は得られておらず、その鉄輸送機構やヘプシジンによる輸送活性調節の機構はほとんど分かっていなかった。今回我々は、細菌由来のフェロポルチン相同タンパク質であるBbFPNについて、外向き開状態および内向き開状態の両方の結晶構造を決定した。アミノ酸配列の類似性は低いものの、BbFPNはMFS(major facilitator superfamily)型輸送体の構造をとっていた。BbFPNの2状態の構造比較から、金属イオンの輸送サイクルの間に起こる構造変化の詳細が明らかになった。また我々は、構造解析および変異体解析に基づき、基質である金属イオンの結合部位を特定した。加えて、BbFPNの構造から、フェロポルチンに対するヘプシジンの結合部位が輸送体中央の溝内部に位置していることが推定された。このようにBbFPNは、フェロポルチンによる生体内の鉄恒常性制御の理解にとって有益な構造モデルとなると期待される。
Reiya Taniguchi, Hideaki E. Kato, Josep Font, Chandrika N. Deshpande, Miki Wada, Koichi Ito, Ryuichiro Ishitani, Mika Jormakka & Osamu Nureki
Corresponding Authors濡木 理
石谷 隆一郎
東京大学大学院 理学研究科 生物科学専攻
Mika Jormakka
シドニー大学(オーストラリア)