PX-RICS-欠損マウスはGABAA受容体の輸送障害によりヤコブセン症候群における自閉症スペクトラム障害に類似した症状を呈する
PX-RICS-deficient mice mimic autism spectrum disorder in Jacobsen syndrome through impaired GABAA receptor trafficking
2016年3月16日 Nature Communications 7 : 10861 doi: 10.1038/ncomms10861
ヤコブセン症候群(JBS)は、11番染色体の長腕末端部の欠失により生じる稀な先天性疾患である。患者の一部は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断基準に合致する社会的行動の問題を示すが、その原因となる分子レベルでの発症機序についてはほとんどわかっていない。PX-RICSは自閉症様行動を示すJBS患者において共通して欠損が見られる染色体領域に存在する。本研究で我々は、PX-RICS欠損マウスがASD様の社会的行動やASDと関連する合併症を示すことを報告する。PX-RICSを欠損したニューロンでは、細胞表面のγ-アミノ酪酸タイプA受容体(GABAA受容体)のレベルが低下しており、GABAA受容体を介したシナプス伝達が障害されていた。PX-RICS、GABARAP、14-3-3ζ/θはアダプター複合体を形成し、GABAA受容体とダイニン/ダイナクチンを相互連結させることで、GABAA受容体の表面発現を促進する。PX-RICS欠損マウスで見られるASD様の行動異常は、GABAA受容体アゴニストを用いて抑制性シナプス伝達を増強させることによって改善された。我々の発見は、認知機能におけるPX-RICSの重要な役割を示し、JBS患者でのPX-RICSの欠損とASD様行動との因果関係を示唆するものである。
Tsutomu Nakamura, Fumiko Arima-Yoshida, Fumika Sakaue, Yukiko Nasu-Nishimura, Yasuko Takeda, Ken Matsuura, Natacha Akshoomoff, Sarah N. Mattson, Paul D. Grossfeld, Toshiya Manabe & Tetsu Akiyama