Research Abstract
PNPLA1はアシルセラミドの生合成を制御することで皮膚バリア機能に重要な役割を担う
PNPLA1 has a crucial role in skin barrier function by directing acylceramide biosynthesis
2017年3月1日 Nature Communications 8 : 14609 doi: 10.1038/ncomms14609
PNPLA1(patatin-like phospholipase domain-containing 1)の変異は常染色体劣性遺伝性魚鱗癬を引き起こすが、その分子メカニズムは解明されていない。本論文では、分化の進んだ表皮角化細胞に発現する酵素であるPNPLA1が、皮膚バリア機能に不可欠な脂質成分であるω-O-アシルセラミドの生合成において重要な役割を担っていることを示す。全身あるいは表皮角化細胞特異的にPnpla1を欠損させたマウス新生仔は、表皮からの多量の水分喪失を伴う表皮の透過性バリア異常、角質細胞間脂質のラメラ構造の減少、表皮角化細胞の分化異常により死亡した。Pnpla1-/-表皮では、アシルセラミド、アシルグルコシルセラミド、(O-アシル-)ω-ヒドロキシ脂肪酸などの皮膚に固有のリノール酸含有脂質がほとんど消失し、その代わりにそれらの推定前駆体が増加していたことから、PNPLA1がリノール酸のω-O-エステル化を触媒してアシルセラミドを形成することが明らかとなった。さらに、Pnpla1-/-角化細胞の分化異常はアシルセラミドを添加することで部分的に回復した。我々の知見は、皮膚バリアの形成および魚鱗癬の発症を理解するための有益な手掛かりになり、また、表皮バリア異常の治療のための新しい治療戦略を提供する可能性がある。