Letter 長いテロメアDNAをもつ線虫の長寿 2004年6月1日 Nature Genetics 36, 6 doi: 10.1038/ng1356 テロメアの長さは老化の決定因子の1つであるが、同質遺伝的背景をもった任意の生物種において、長いテロメアをもつ動物が正常テロメア長のものに比べて長生きするかどうかは明らかになっていない。本論文では、線虫Caenorhabditis elegansにおける長いテロメアの寿命への影響について報告する。テロメア長が寿命に及ぼす影響を、テロメア結合タンパク質であるHRP-1の過剰発現により検討した。HRP-1を過剰発現させるとテロメアは徐々に伸長していき、テロメアが長くなるほど線虫の寿命は長くなった。長くなったテロメアを保持した、遺伝子導入線虫由来の非遺伝子導入体子孫の寿命を調べることで、寿命の延長はテロメアが長くなった結果であり、HRP-1の過剰発現それ自体によるものではないことを確認した。長いテロメアのもたらす寿命延長効果はdaf-16に依存していた。長いテロメアの線虫での生殖系列幹細胞の数に変化がなかったことは、寿命に及ぼすテロメアの効果が生殖系列幹細胞の細胞周期の調節に無関係であることを示す。さらに、長いテロメアをもつ線虫は熱ストレスへの耐性を増していた。これらの結果は、生物体の寿命を制御するシグナル伝達が、分裂を終えた体細胞でのテロメア長により開始されるかもしれない可能性を示唆している。 Full text PDF 目次へ戻る