Article

ハンチントン病のモデルショウジョウバエとマウスにおいて、mTORの阻害によって自食作用が誘導され、ポリグルタミン伸張による毒性が減少する

Nature Genetics 36, 6 doi: 10.1038/ng1362

ハンチントン病は、ポリグルタミン鎖の伸張によって引き起こされる9つの遺伝性神経変性疾患のうちの1つである。伸張したポリグルタミンタンパク質は、細胞内凝集体のなかに異常に蓄積している。今回我々は、ラパマイシンの哺乳類での標的(mTOR)が、細胞モデル、トランスジェニックマウス、ヒト脳においてポリグルタミン凝集体中に隔離されていることを示す。mTORの隔離によって、そのキナーゼ活性が消失し、変異したハンチンチン断片を取り除く主要な経路である自食が誘導される。mTORの特異的阻害物質であるラパマイシンは、ハンチントン病の細胞モデルにおいてハンチンチンの蓄積と細胞死を減少させ、自食を阻害すると逆の結果となるので、自食作用の誘導により、ポリグルタミンの毒性からまぬがれることがわかる。さらに、ラパマイシンはハンチントン病モデルショウジョウバエで神経変性を防ぐ効果を示し、ラパマイシン類似体であるCCI-779はハンチントン病マウスモデルにおいて4種類の行動割り当て作業効率を改善させ、また、凝集体形成を減少させた。我々のデータは、自食作用を誘導することがハンチントン病の治療法となりうるという考えを支持するものである。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度