Letter

MLH1のD132H変異体が散発性大腸がんの感受性と関連している

Nature Genetics 36, 7 doi: 10.1038/ng1374

大腸がん(CRC)感受性のほとんどは、過去に知られている危険因子では説明がつかない。MLH1MSH2MSH6の変異は、遺伝性非腺腫性大腸がん(HNPCC)における高浸透率のCRC感受性と関与しているので、我々は散発性CRCに対する感受性にも、これらの減弱している対立遺伝子が何らかの形で関わっているのではないかという仮説を立てた。我々は、家族性CRCをもち、マイクロサテライト不安定性(MSI)の表現型に関して層別化されていないイスラエル人発端者らについて、HNPCCと関連を示す遺伝子の変異を探した。関連解析の結果、MLH1の新しい変異(415G→C、それによるアミノ酸置換D132H)が、自称ユダヤ教、キリスト教、イスラム教であるCRCのイスラエル人の約1.3%に見つかった。MLH1の415番目のC塩基は臨床的にみてCRCの感受性を有意に上げる。典型的なHNPCCと異なり、MLH1の415番目のCと関連しているCRCは通常、臨床における重要な変異スクリーニングとして利用されるMSI異常をともなわない。構造的解析および機能的解析を行ったところ、MLH1の415G→CによってMLH1の示す通常のATPアーゼ機能は減弱しているが、完全にはなくなっていないことがわかった。今回新しく見つかったMLH1の変異は、CRCのリスクを高めるがマイクロサテライトは安定である腫瘍の新たな機序を示すものである。これらの研究結果はミスマッチ修復タンパク質の変異体のもつ減弱した機能が、過去に推測されていたよりもずっと高い頻度で、マイクロサテライト安定型の散発性CRCの感受性に関わっていることを説明するものであろう。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度