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アデノ随伴ウイルスベクターは染色体切断部位に組み込まれる

Nature Genetics 36, 7 doi: 10.1038/ng1380

アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによる細胞の形質導入には、未知の機序による染色体の非相同部位への組み込みをはじめ、複数の経路がかかわっている。本論文では、自然に起こる染色体切断がベクターの組み込みを促進しているかもしれないと推論し、エンドヌクレアーゼであるI-SceIによる二本鎖染色体上の特異的な部位の切断や、エトポシド処理やガンマ線照射による染色体の多部位の切断を含んだ細胞を使って調べた。ベクターのプロウイルスはI-SceI切断部位でみいだされ、ベクターと染色体との結合部位の塩基配列決定により、ランダムな部位で自然に組み込みが起こったときや、二本鎖切断が導入されて組み込みが起こったときと同じような、マイクロホモロジーや欠失、挿入が認められた。通常のヒト細胞では、AAVベクターの感染は突然変異率を上昇させなかった。我々の結果は、組み込みの機序を説明するとともに、AAVベクターが自分自身で染色体に切断を起こすよりはむしろ、すでにある染色体切断部位に組み込まれることを示唆するもので、これらの知見は臨床で使用する上で意味をもつことである。

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