Letter

線虫( Caenorhabditis elegans)の ABL-1は電離放射線照射後のp53を介する生殖系列のアポトーシスに拮抗する

Nature Genetics 36, 8 doi: 10.1038/ng1396

保存された非受容体型チロシンキナーゼであるc-Ablは、前アポトーシスおよび抗アポトーシスの両方のエフェクター経路の伝達分子として機能し、遺伝毒性ストレス応答を統合する。核内c-Ablは、アポトーシスを誘導するために、p53ホモログであるp73と相互作用するようである。いくつかの観察から、c-Ablの細胞質内局在が抗アポトーシス機能に必要であることが示唆されているが、この抗アポトーシス効果を仲介するシグナルはほとんど知られていない。今回我々は、線虫(Caenorhabditis elegans)の生殖細胞系において、abl-1対立遺伝子を欠失した線虫abl-1ok171)が、放射線誘導のアポトーシスに特に高感受性であることを示す。我々の所見は、ABL-1が拮抗するアポトーシス経路を描写するものである。つまりこの経路は、連続して、細胞周期チェックポイント遺伝子であるclk-2hus-1およびmrt-2、線虫のp53ホモログであるcep-1、アポトーシス機構で保存されている構成要素をコードする遺伝子であるced-3ced-9および egl-1を必要とするのである。ABL-1は、DNAアルキル化剤エチルニトロソウレアによって誘導される生殖系列のアポトーシスには拮抗しない。さらに、c-Abl阻害剤STI-571(グリベック、ヒトの癌治療に使用される)、2つの新規合成STI-571誘導体、あるいはPD166326で処理した線虫は、abl-1ok171)により生み出された線虫と同様の表現型であった。これらの研究は、ABL-1が2つの異なったDNA損傷剤によって引き起こされる前アポトーシスシグナルを識別することを示し、線虫が抗癌剤開発のための組織モデルとなるであろうことを示唆するものである。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度