Article リンパ球の増殖と形質転換は、PU.1をコードしている遺伝子の重要な調節配列によって抑制される 2006年1月1日 Nature Genetics 38, 1 doi: 10.1038/ng1679 PU.1などの転写因子が厳密に制御されていることは、造血細胞の全細胞系譜の発生にとって重要である。我々は以前、PU.1をコードしている遺伝子(Sfpi1)の上流調節配列(URE)を欠損したマウスが、急性骨髄性白血病を発症することを報告した。本論文では、リンパ球の発生と腫瘍の抑制に必要なPU.1の動的な発現パターンの調節にUREが不可欠な役割をもつことを示す。URE欠失マウスでは、B2細胞は観察されなかったが、B1細胞の増殖は促進されていた。UREはB細胞においてはPU.1のエンハンサーとして、T細胞の前駆細胞ではリプレッサーとして機能していた。転写因子TCFはこのリプレッサー機能を調節しており、このことはPU.1がWntシグナル伝達の影響を受けることを示していた。UREが欠失したT前駆細胞においてPU.1の転写が適切に抑制されない場合には、前駆細胞は分化することなく、胸腺の形質転換(腫瘍化)が誘発されていた。ゲノム全体についてDNAメチル化の程度を調べたところ、特定の腫瘍抑制遺伝子のエピジェネティックなサイレンシングが、URE欠失リンパ球前駆細胞のPU.1による形質転換に必要であることが示された。これらの結果は、ただ1つの転写因子PU.1が、その重要なcis調節配列が示す細胞型特異的な活性を介して、複数の細胞系譜の発生に影響を及ぼして、癌を生じさせる機序を明らかにするものである。 Full text PDF 目次へ戻る