Article 遺伝子突然変異による腎臓病は回復可能かもしれない 2006年12月1日 Nature Genetics 38, 12 doi: 10.1038/ng1918 体に害を及ぼす腎臓病の新たな遺伝的要因を同定した研究報告が、『Nature Genetics』の12月号に掲載される。この研究では、あるネフローゼ症候群の変種の研究により、その一部の症例が治療によって完全に回復可能であることを示す初めての証拠も得られた。 ネフローゼ症候群は、腎臓のろ過装置の機能不全が原因で、体のむくみや腎臓障害を症状とする。多くの場合には重度の腎臓病を発症し、透析や腎臓移植が必要となる。同症候群の背後には数種類の遺伝子が関係していることがわかっているが、全症例の70%は未解明のままとなっている。 ミシガン大学(米国)のF Hildebrandtたちは、若年性ネフローゼ症候群患者のいる5つの家族を調査して、PLCE1遺伝子の変異を同定した。このうち2人の子どもについてはステロイド療法が十分に効果を示し、治療中止から数年後でも症状はみられなかった。一部のネフローゼ症候群については、ステロイド療法で症状が改善することが知られているが、今回の論文では、完全に回復可能なタイプのネフローゼ症候群が初めて報告されている。Hildebrandtたちは、PLCE1の機能喪失という特徴をもつ発達障害が確認できれば、治療法が効果をもつ間に患者を回復させられるチャンスが得られるかもしれないと考えている。 Full text PDF 目次へ戻る