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マイクロRNA:マイクロRNAのプロセシング障害は細胞の形質転換と腫瘍形成を促進する

Nature Genetics 39, 5 doi: 10.1038/ng2003

マイクロRNA(miRNA)は、標的mRNA転写産物の発現を転写後調節する新しいクラスの小さい非コードRNAである。これらの標的mRNA転写物産物の多くは、腫瘍が形成される間に共通して変化する増殖、分化、アポトーシスなどの過程に関与している。最近になってヒトの癌において成熟miRNAの発現が全体的に低下していることが示された。しかし、これらの全体的なmiRNAの発現低下が、腫瘍の未分化状態を反映するものか、腫瘍への形質転換の原因であるかについては不明である。我々は、miRNAの成熟の全体的な低下が細胞の形質転換と腫瘍形成を促進することを示す。miRNAプロセシング装置の3つの異なった構成成分を標的とする短いヘアピンRNA(shRNA)を発現している癌細胞では、定常状態のmiRNAのレベルが非常に低下しており、形質転換能が顕著に増加している。動物実験において、miRNAプロセシングが障害された細胞は、加速的に腫瘍が形成された。これらの腫瘍は対照よりも侵襲性が高く、miRNAの全体的な消失が腫瘍形成を促進していることを示唆している。さらにDicer1を特定の条件下で欠失させると、K-Rasによって誘発されたマウス肺癌モデルの腫瘍形成が促進された。これらの結果は、miRNAプロセシングの全体的な消失は腫瘍形成を促進することを示す。

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