幸福顔貌骨異形成症は常染色体劣性遺伝疾患であり、低身長、短趾症、肥厚皮膚ならびに、しばしば若年死の原因となる心臓弁膜奇形がみられる。我々は6つの幸福顔貌骨異形成症家系を調べることにより、その原因遺伝子が染色体9q34.2の領域に位置することを見つけ、機能未知の分泌糖タンパク質をコードするADAMTSL2(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin repeats-like 2)遺伝子において5つの異なったナンセンス変異とミスセンス変異を同定した。HEK293細胞を用いた機能解析では、ADAMTSL2変異は変異タンパク質の分泌減少を起こすことがわかった。これはおそらくADAMTSL2の折りたたみ異常によるものと考えられる。酵母ツーハイブリッドスクリーニングで調べると、ADAMTSL2はLTBP1(latent TGF-β-binding protein1)と相互作用することがわかった。さらに、幸福顔貌骨異形成症の患者から得た線維芽細胞の核内に、リン酸化SMAD2の増加を認めるとともに、培養上清においてTGF-βの総量および活性型の有意な増加を認めた。これらのデータはADAMTSL2変異がTGF-βシグナル伝達の調節異常をきたし、幸福顔貌骨異形成症の発症機序となっている可能性を示唆する。