Letter ミトコンドリアの翻訳:COX Iの翻訳活性化因子をコードするTACO1遺伝子の変異はシトクロムc酸化酵素の欠乏と遅発性のリー症候群をもたらす 2009年7月1日 Nature Genetics 41, 7 doi: 10.1038/ng.390 ミトコンドリアの翻訳の欠損はミトコンドリアによって起こる病気の原因として最もよくみられるものの1つであるが、ミトコンドリアの翻訳を調節している仕組みはほとんど知られていないままである。酵母Saccharomyces cerevisiaeでは、すべてのミトコンドリアのmRNAには特異的な翻訳活性化因子が必要であり、この活性化因子は5′UTR配列を認識し、翻訳を助ける働きをする。哺乳類のミトコンドリアmRNAには明らかな5′UTR配列がなく、翻訳を促進するにはそれに変わる仕組みがあるに違いないと考えられる。遅発性のリー症候群とシトクロムc酸化酵素(COX)の欠乏が遺伝する家系で、ミトコンドリアDNA(mtDNA)がコードしているCOX Iのサブユニットの合成に特異的な欠損がみられた。機能の相補性から、この欠損を染色体17qに位置決定し、CCDC44遺伝子が、1塩基の挿入のホモ接合体となっていることを同定した。CCDC44遺伝子は、保存されたDUF28領域を持つ仮想的なタンパク質の大きなファミリーのメンバーの1つをコードしているが、我々は、CCDC44をTACO1、すなわち「COX Iの翻訳活性化因子」と名前をつけ直した。TACO1は、細菌に存在する相同遺伝子と著しい構造的な類似性をもっていることがわかった。この発見から、この遺伝子は、哺乳類の特異的なミトコンドリアの翻訳活性化因子のファミリーの1つであることが示唆される。 Full text PDF 目次へ戻る