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線毛:INPP5Eの突然変異はヒトやマウスの、一次線毛のシグナル伝達異常、線毛の不安定化、線毛関連疾患を引き起こす

Nature Genetics 41, 9 doi: 10.1038/ng.427

一次線毛は、静止期にある細胞および分化を遂げた細胞の表面から突出したアンテナのような構造体であり、細胞外シグナルのプロセシングに関与している。本論文では、脂質の5-ホスファターゼであるInpp5eを欠損したマウスでは、一次線毛の構造異常を伴う多臓器不全の発症がみられることを報告する。線毛のあるマウス胎仔線維芽細胞では、Inpp5eは一次線毛の軸糸に局在している。この細胞のInpp5eを不活化したところ、線毛のアセンブリは損なわれることなく起こるが、形成された線毛は血清の添加によってその安定性を失った。ここで、ホスホイノシチド3キナーゼ(PI3K)の活性を阻害するか、線毛の血小板由来増殖因子受容体α(PDGFRα)の機能を封じると、線毛の安定性が回復した。さらに、ヒトのINPP5Eについては、INPP5Eの線毛での局在化や線毛の安定性に影響を及ぼす突然変異を、バルデー・ビードル(Bardet-Biedl)症候群に類似した病状を示すMORM症候群患者の家系において同定した。上記の結果から、INPP5Eが、線毛の増殖因子やPI3Kシグナル伝達、および安定性を制御することで、一次線毛において欠くことのできない役割を果たしていることが示され、INPP5Eの機能異常によってどのような結果が引き起こされるかが明らかになった。

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