Article 血液・造血器疾患:小児T細胞性急性リンパ芽球性白血病におけるIL7Rの発がん性機能獲得型変異 2011年10月1日 Nature Genetics 43, 10 doi: 10.1038/ng.924 インターロイキン7(IL-7)と、その受容体〔IL-7Rα(IL7Rにコードされる)およびγcによって形成される〕は、正常なT細胞の発達と恒常性に不可欠である。本論文では、IL7RがT細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)において変異しているがん遺伝子であることを示す。T-ALL罹患者の9%にIL7Rのエキソン6の体細胞性の機能獲得型変異が見られた。ほとんどの場合、このようなIL7Rの変異は、細胞外の膜近傍-膜貫通領域にジスルフィド結合を形成していないシステインを導入するもので、変異型IL-7Rαサブユニット間で分子間ジスルフィド結合のde novo形成を促進することで、IL-7、γcあるいはJAK3とは独立しているが、JAK1を介した構成的シグナル伝達を行わせる。IL7Rの変異は、IL-7によって引き起こされる遺伝子発現プロファイルに部分的に類似したプロファイルを誘導する。また、IL7Rの変異は、TLX3の再編成とHOXAの脱調節が見られる症例からなるT-ALLサブグループに多く見られる。IL7Rの変異は細胞の形質転換と腫瘍形成を促進することに注目すべきである。まとめると、我々の知見は、IL7Rの変異による活性化がヒトのT細胞性白血病誘発に関与することを示すものであることから、T-ALLにおいてIL-7Rを介するシグナル伝達を治療標的とする道が開かれると考えられる。 Full text PDF 目次へ戻る