Article 1型糖尿病:Foxo1欠失によって腸内に出現した機能性インスリン産生細胞 2012年4月1日 Nature Genetics 44, 4 doi: 10.1038/ng.2215 インスリン分泌が正しく調節されている状態へ回復することは1型糖尿病を治療するうえでの最終目標である。本論文では、Neurog3+腸内分泌細胞前駆細胞においてFoxo1を欠失させると、意外なことに、インスリンポジティブ(Ins+)細胞が生じたことを報告する。この腸のIns+細胞は、成熟膵β細胞のマーカーを発現し、グルコースやスルホニル尿素に応答して、生理活性のあるインスリンはもちろんCペプチドも分泌していた。発生期における細胞運命を追跡する手法を用いて、腸Ins+細胞が、Foxo1を欠失させた前駆細胞から細胞自律的に生じることが判明した。さらにFoxo1の不活性化を誘導したマウスを作出したところ、その腸にIns+細胞が出現した。このマウスにβ細胞に傷害をもたらすストレプトゾシンを投与すると、腸Ins+細胞が再び出現してインスリンが産生されるため、血糖値は次第に低下していった。これらの結果は、Foxo1が活性化していると、Neurog3+腸内分泌細胞前駆細胞がIns+細胞へ分化しないことを示唆している。腸上皮のFoxo1の欠失が、1型糖尿病患者のインスリン産生を回復する方法となる可能性が高い。 Full text PDF 目次へ戻る