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副腎腫瘍:コルチゾール産生副腎腫瘍でPRKACAの活性化変異が頻発
Nature Genetics 46, 6 doi: 10.1038/ng.2956
副腎腫瘍は自律的にコルチゾールを産生しクッシング症候群を起こす。我々は25組の腫瘍―正常ペアについてエキソーム配列決定を行い、2つの亜群を見つけた。8例の腫瘍(3例のがんを含む)では多数の常染色体コピー数異常(CNV)があり、CDC42やCDKN2Aの頻繁な欠失、5q31.2の増幅、TP53あるいはRB1のタンパク質変化を来す変異が見られた。17例の腫瘍(全て腺腫)では体細胞レベルのCNV、TP53、RB1の変異は見られなかった。このうち6例の腫瘍はCTNNB1(βカテニン)あるいはGNAS(Gαs)の既知の機能獲得性変異を持っていた。このほかの6例の腫瘍にはPRKACA(タンパク質キナーゼA(PKA)の触媒活性ユニット)にアミノ酸置換p.Leu206Argを来す体細胞レベルの変異が見られた。さらに配列決定を進めると63例中13例(明白なクッシング症候群を示す腺腫35%)にこの変異が検出された。PRKACA、GNAS、CTNNB1の変異は相互排他的であった。Leu206はPKAの制御ユニットであるPRKAR1Aと直接に相互作用する。Leu206Arg型のPRKACAはPRKAR1Aとの結合能を失い、下流の標的分子のリン酸化を増強した。PKA活性はコルチゾール産生と細胞増殖を誘発し、腫瘍発生の機序の1つとなる。これらの知見は副腎のコルチゾール産生腫瘍発生の基盤になる相異なるメカニズムを明らかにするものである。