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膵がん:LINC00673の膵がんのリスクバリアントはmiR-1231結合部位を作り出し、PTPN11の分解を妨ぐ
Nature Genetics 48, 7 doi: 10.1038/ng.3568
ゲノムワイド関連研究から膵がんのリスクに関連するいくつかの座位が同定されている。しかし、そのような遺伝学的要因が散発性膵がんの発症に影響を及ぼす機構はほとんど解明されていない。本論文では、ゲノムワイド関連解析および機能的特徴付けにより、長鎖遺伝子間非コードRNA(lincRNA)のLINC00673が、がん抑制因子の可能性があり、その生殖細胞系列多様性が膵がんのリスクに関連していることを明らかにした。LINC00673は、E3ユビキチンリガーゼであるPRPF19とPTPN11との相互作用を増強し、ユビキチン化を介してPTPN11の分解を促進することで、SRC–ERK発がん性シグナル伝達の減弱とSTAT1依存性抗腫瘍応答の活性化上昇を引き起こす。LINC00673のエキソン4のrs11655237でのG > A変化によりmiR-1231結合の標的部位が作り出され、これによって対立遺伝子特異的にLINC00673の効果が減弱され、腫瘍形成に感受性になる。これらの知見は細胞の恒常性維持におけるLINC00673の重要な役割を新たに明らかにし、また、その生殖細胞系列での多様性が膵がんの感受性に寄与する仕組みを示している。