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クロマチン:最終分化ではエンハンサー–プロモーターの細胞系譜特異的で動的な接触とあらかじめ確立された接触が協調している

Nature Genetics 49, 10 doi: 10.1038/ng.3935

染色体のコンホメーションは後生動物の遺伝子調節の重要な特徴である。しかし、細胞分化の過程でのエンハンサー–プロモーターの接触のリモデリングについてはほとんど解明されていない。この問題に取り組むために、表皮分化の過程においてゲノムワイドなプロモーターHi-C(CHi-C)法を行った。その結果、2種類のエンハンサー–プロモーターの接触が分化誘導遺伝子に関連することが突き止められた。1つ目の種類(「獲得型」)は、分化の過程でエンハンサーへのH3K27ac活性化標識の獲得とともに接触強度を上昇させた。2つ目の種類(「安定型」)は、未分化細胞にあらかじめ確立されており、エンハンサーは構成的にH3K27acで標識されていた。この安定型はカノニカルなコンホメーション調節因子コヒーシンに関連しているが、獲得型は関連していないことから、接触の形成や調節には異なる機構が存在すると考えられる。安定型のエンハンサーの解析から、構成的に発現し細胞系譜が制限されたETSファミリー転写因子であるEHFが表皮分化において新規の不可欠な役割を担っていることが明らかになった。その上、多能性細胞ではどちらの種類の接触も観察されなかったことから、細胞系譜特異的なクロマチン構造は組織前駆細胞で確立されて、最終分化においてはさらなるリモデリングが起こると考えられた。

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