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コムギ:ストレスと有性生殖がコムギ病原菌エフェクターAvrStb6の動態とストロビルリン耐性に影響する
Nature Genetics 50, 3 doi: 10.1038/s41588-018-0052-9
植物病害防除の土台は、病原体に対する宿主の抵抗性と殺菌剤処理である。本論文で我々は、宿主の抵抗性や殺菌剤処理では、コムギ真菌病原体Zymoseptoria triticiの有性生殖は防御できず、病原菌の親株同士が雄雌を調整して交配するようになることを示す。また、コムギ抵抗性タンパク質Stb6に認識されるエフェクターAvrStb6を同定し、Z. triticiとコムギとの関係が遺伝子対遺伝子説に適合することを示す。宿主が病原体を認識すると宿主抵抗性が誘発されるため、病原体集団から非病原性株は排除されていくはずである。しかしZ. triticiは、コムギ上で有性生殖を行う際、親株の一方が非病原性であっても交配し、それによって非病原性対立遺伝子は次世代個体群でも維持される。殺菌剤に対する感受性株と耐性株を殺菌剤存在下で交配すると、耐性対立遺伝子の頻度が急激に増加する。選択条件下で分離される株は常に雄性株として働くため、植物病害防除により雌雄の調整が起こる。農業環境および自然環境についてこれらの観察に基づくモデリングを行ったところ、宿主抵抗性の持続期間はこれまで考えられていたより長く、殺菌剤に対する耐性菌の出現は速いことが明らかとなった。以上により、病原菌の有性生殖は植物病害防除に大きな影響を与えると考えられる。