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乳がん:ARID1AはHDAC1/BRD4活性、内因性増殖能および乳がんの治療奏効性に影響を与える
Nature Genetics 52, 2 doi: 10.1038/s41588-019-0541-5
我々は、内分泌療法抵抗性を理解するために、ゲノムワイドCRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)スクリーニングを行った。その結果、ARID1Aおよびその他のSWI/SNF複合体構成要素が、2種類のエストロゲン受容体アルファ(ER)アンタゴニストに対する応答に必要な最重要因子であることを見いだした。この場合、SWI/SNF特異的に遺伝子を欠損させると、薬剤耐性を引き起こした。意外にも、ARID1Aは、BET(bromodomain and extraterminal domain)の阻害剤であるJQ1に対する応答に関しても最上位候補であったが、その方向性は逆であり、ARID1Aの喪失は、乳がん細胞をBET阻害に対して感受性にした。我々は、ARID1Aが、ERシス調節配列のクロマチンに結合する抑制因子であることを示す。ただし、ARID1Aの抑制活性はエンハンサー特異的であり、forkhead box A1依存的かつ活性型ERには非依存的様式であった。ARID1Aを欠失させると、ヒストン脱アセチル化酵素1の結合が失われ、ヒストンH4リシンアセチル化が増加し、その後にBRD4による転写が誘導されて増殖が起こる。ARID1A変異は、治療抵抗性がんにおいてより高頻度で見られ、我々の結果は、この過程のメカニズムに対する理解を深め、さらには、このような患者に対する合理的な治療戦略を示すものである。