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前立腺がん:一細胞トランスクリプトミクスで明らかになった、前立腺陥入の遠位末端に特有の管腔前駆細胞タイプ
Nature Genetics 52, 9 doi: 10.1038/s41588-020-0642-1
前立腺の幹/前駆細胞の特定と、前立腺上皮細胞系譜の階層性の特性解析は、前立腺がんのイニシエーションを解明する上で非常に重要である。今回我々は、マウス前立腺からの3万5129個の細胞について特性を解析し、Tacstd2、Ck4およびPscaの発現により標識される独特な管腔細胞タイプ〔C型管腔細胞(Luminal-C)と命名〕を特定した。前立腺陥入の遠位末端に位置するLuminal-C(Dist-Luminal-C)は、in vitroでのオルガノイド形成と、in vivoでの前立腺上皮腺管の再生に対して高い能力を示した。Luminal-Cの細胞系譜追跡からは、Dist-Luminal-Cは、自己複製と分化により、前立腺の遠位腺管を再構成することが明らかになった。Dist-Luminal-CでPtenを欠損させると、前立腺上皮内腫瘍が生じた。さらに、ヒトについても1万1374個の前立腺細胞の特性を解析し、h-Luminal-Cが存在することを確認した。我々の研究は、前立腺の細胞系譜の階層性についての理解を深め、陥入末端にある管腔前駆細胞集団としてDist-Luminal-Cを特定し、これが前立腺がんの細胞起源の1つである可能性を示唆するものである。