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がん治療:一細胞レベルで細胞の可塑性を調整する治療抵抗性推進因子の遺伝的スクリーニング
Nature Genetics 53, 1 doi: 10.1038/s41588-020-00749-z
細胞の可塑性とは、ある表現型群から別の表現型群に移行できる細胞の能力のことのである。黒色腫では、腫瘍細胞の分子的状態に一過性の変動が見られ、その変動が、BRAF阻害下で生存できるプライミングされたまれな細胞の形成と、安定した薬剤抵抗性運命への再プログラム化の目印となる。しかし、細胞のプライミングを左右する生物学的過程についてはまだ分かっていない。今回我々は、細胞の可塑性を変化させることで細胞の運命決定に影響を及ぼす遺伝子を特定するために、CRISPR–Cas9による遺伝的スクリーニングを行った。その結果、多くの因子が細胞のプライミングや運命決定に独立に影響することが明らかになった。我々は、細胞の分化状態を進めて、BRAF阻害に対する細胞の抵抗性を高める、可塑性に基づく新たな様式を見いだした。DOT1Lを阻害してからBRAF阻害剤を加えることで細胞の可塑性を操作すると、それらを同時投与した場合よりも治療抵抗性が高くなった。これらの結果は、細胞の可塑性の調節によって、細胞の運命決定を変化させることができ、他のがんにおける薬剤抵抗性の治療にも有用である可能性を示している。