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大腸がん:アミノ酸輸送体SLC7A5はKRAS変異型大腸がんの効率的な増殖に必要である
Nature Genetics 53, 1 doi: 10.1038/s41588-020-00753-3
大腸がん(CRC)では、発がん性KRAS変異とAPC腫瘍抑制因子の不活化が同時に生じる。変異型KRASを直接標的にしようという取り組みが行われているが、ほとんどの治療手法は下流の経路を標的にしているので、有効性は限られている。しかも、変異型KRASは、がん細胞の基礎代謝を変化させて、グルタミンの利用を増加させることにより、増殖を助ける。本論文では、マウス腸上皮においてApcとKrasに併発する変異が、代謝の著しい再配線を行って、グルタミン消費を増加させることを示す。さらに、グルタミン対向輸送体であるSLC7A5は、初期段階と後期段階の両方の転移がんモデルにおいて、大腸の腫瘍発生に極めて重要であった。機序としては、SLC7A5は、KRAS活性化の後に、転写や代謝の再プログラム化を介して、細胞内のアミノ酸レベルを維持する。この機序が、KRAS変異型細胞の増殖亢進を支える大量のタンパク質合成の需要増加を助けている。さらに、Slc7a5欠失と共に、mTORC1調節因子の阻害によってタンパク質合成を標的化すると、確立されたKras変異型腫瘍の増殖が起こらなかった。総合的にこれらのデータは、SLC7A5が治療抵抗性KRAS変異型CRCの魅力的な標的であることを示唆している。