Article

転写制御:SWI/SNFクロマチンリモデリング複合体は、Rループを介した転写と複製の衝突の解消を促す

Nature Genetics 53, 7 doi: 10.1038/s41588-021-00867-2

ATP依存性クロマチンリモデリング複合体の変異は、ヒトのがんではよく見られる現象である。哺乳類のSWI/SNF複合体は、3つの保存された多サブユニットクロマチンリモデリング複合体(cBAF、ncBAF、PBAF)で構成されており、主要なATPアーゼ活性を担うサブユニットとしてBRG1(別名SMARCA4)を共通して持つ。BRG1は、がんで最も頻繁に変異しているSnf2様ATPアーゼである。本研究では、転写やDNA複製、DNA損傷修復におけるSWI/SNFの役割を考慮し、がん細胞の特徴であるゲノム不安定性におけるSWI/SNFの働きについて調べた。その結果、BRG1が減少すると、転写と複製の衝突(transcription–replication conflict)が増加することに加え、RループおよびRループ依存的DNA損傷も増加することが明らかになった。BRG1はRループや複製フォーク阻害点と共局在し、この局在はFANCD2凝集体によって左右されるが、BRG1の減少はFANCD2のサイレンシングに対してエピスタシス的に上位である。我々の研究は、他のSWI/SNF構成要素にも拡張され、Rループを介した転写と複製の衝突の解消を促す上でのSWI/SNF複合体(特にcBAF)の主要な役割を見いだし、ひいては、クロマチンリモデリングがゲノム完全性を保護する新たな機構を明らかにしている。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度