Perspective
創薬:英国バイオバンクのエキソーム塩基配列決定によるヒトの遺伝学的研究と創薬の推進
Nature Genetics 53, 7 doi: 10.1038/s41588-021-00885-0
英国バイオバンク(UKB)とバイオ医薬品企業8社が参加する官民協力組織である英国バイオバンク・エキソーム塩基配列決定コンソーシアム(UK Biobank Exome Sequencing Consortium;UKB-ESC)は、約50万人のUKB参加者全員のエキソーム塩基配列決定を完了させる計画を立てている。本稿では、約20万人のUKB参加者から得られた初期の結果と、このプロジェクトを成功に導いた要因について述べる。バイオ医薬品業界では、創薬の成功率を高めるためにヒトの遺伝学に関する知見を使用することが増えている。大規模なヒトの遺伝学的データの必要性と、データアクセスに関してUKBが設けている規約の独自の価値が認識され、UKB-ESCが設立された。その結果、現時点で20万643人のUKB参加者のエキソームデータが利用可能となっている。データには約1000万のエキソンバリアントが含まれており、創薬において特に重要なコード領域のレアバリアントについて多くの情報を提供する。UKB-ESCにおいて競合各社が基礎研究の段階で行う協力は、学術界と産業界の連携をさらに強化し、各社が幅広い研究コミュニティーと交流して学ぶ機会を与えてくれる。