Article

クロマチン調節:ヒストンH3プロリン16のヒドロキシ化は哺乳類の遺伝子発現を調節する

Nature Genetics 54, 11 doi: 10.1038/s41588-022-01212-x

ヒストンの翻訳後修飾(PTM)は、DNAを鋳型として用いるさまざまな過程の調節に重要である。今回我々は、哺乳類細胞における新たなヒストンPTMの存在について報告する。具体的には、ヒストンH3の16番目のプロリン残基のヒドロキシ化(H3P16oh)であり、これはプロリンヒドロキシラーゼEGLN2により触媒される。H3P16ohは、KDM5Aが基質H3K4me3(4番目のリシン残基がトリメチル化されたヒストンH3)に直接結合するのを促進し、その結果、KDM5Aのクロマチンへの誘導が強まり、同時に標的遺伝子のH3K4me3を減少させることが分かった。ゲノム規模およびトランスクリプトーム規模の解析から、EGLN2–KDM5A軸は哺乳類細胞で標的遺伝子の発現を調節することが明らかになった。具体例として、我々のデータは、EGLN2–H3P16oh–KDM5A経路を介したWNT経路の負の調節因子であるDKK1の抑制が、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)においてWNT/β-カテニンシグナル伝達を促進することを示している。この研究は、ヒストンコードの新たな調節標識を明らかにし、哺乳類遺伝子の発現調節におけるH3P16ohの役割を示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度