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ミスマッチ修復:ミスマッチ修復異常は腫瘍の免疫原性の誘導に十分ではない
Nature Genetics 55, 10 doi: 10.1038/s41588-023-01499-4
DNAのミスマッチ修復異常(MMRd)は、大きな腫瘍変異量(TMB)や免疫チェックポイント阻害(ICB)療法に対する感受性と関連している。しかしながら、ほとんどのMMRd腫瘍はICBに持続的な応答を示さないので、MMRd腫瘍における免疫監視とTMBについては重要な疑問が残されている。今回我々は、MMRdの肺がんおよび大腸がんの自然発症マウスモデルを開発した。驚くべきことに、これらのモデルは、T細胞浸潤の増加やICBへの応答増強を示さず、これは腫瘍内の変異の大きな不均一性の結果であることが判明した。また、免疫監視はクローンの構造を方向付けるが、ネオアンチゲンの全体量を決めるわけではなく、また、優勢ではないサブクローンのネオアンチゲンに対するT細胞応答は起こらないことも明らかになった。さらに、MMRdの胃がんおよび大腸がんの臨床試験では、優勢なクローンのネオアンチゲン量がICBへの応答を予測するが、優勢ではないクローンのネオアンチゲン量は応答を予測しないことが示された。これらの結果は、TMBの大きいがんにおける免疫回避を理解するための重要な基盤となる知識を示すものであり、TMBの増加を目的とした治療に大きな影響をもたらすものである。