Article
ネギ:ネギ属作物の主要3種についての染色体レベルのゲノムとその形質進化
Nature Genetics 55, 11 doi: 10.1038/s41588-023-01546-0
ネギ属(Allium)の作物の育種では、高品質の参照ゲノム配列がないことが大きな障害となっている。今回、ネギ属作物の主要3種(ネギ、ニンニク、タマネギ)について、ゲノムサイズがそれぞれ11.17 Gb、15.52 Gb、15.78 Gb、最大のN50値がそれぞれ507.27 Mb、109.82 Mb、81.66 Mbの高品質の染色体レベルのゲノム配列を報告する。我々は、ネギ属の種のゲノム進化の過程を明らかにするにとどまらず、病原体感染実験および代謝やゲノムについての比較分析により、ネギ属特有の芳香成分の代謝経路に関わる酵素をコードする遺伝子群が、未同定の古代の植物防御システムから進化したものである可能性を示した。この未同定の植物防御システムは、古くは広範な植物種に存在したが、特にネギ属の種においてのみ強化されたと考えられる。また、in situハイブリダイゼーションや空間的RNA塩基配列決定の手法を用いることにより、タマネギの鱗茎形成に関わる細胞タイプや鱗茎が形成される際の海綿状葉肉細胞の肥大に伴う遺伝子発現変化の概要を明らかにし、それにより鱗茎形成に関わる遺伝子群の機能的役割を示した。