Article
ダニ:高品質なシカダニ(Ixodes scapularis)のゲノムはダニの科学を推進させる
Nature Genetics 55, 2 doi: 10.1038/s41588-022-01275-w
マダニ(Ixodes)属や類縁のダニは蔓延する感染症を媒介する。しかしそれらの生物学に関する知識やダニ対策法の開発は、高品質のゲノムがないことが妨げとなっていた。今回の研究で我々は、シカダニ(Ixodes scapularis)ゲノムの22億3000万塩基対のアセンブリを報告する。これは、1個体から2つのハプロタイプを塩基配列決定した結果を、染色体レベルのスキャッフォールドと全長のRNAアイソフォームの塩基配列決定によって補完したものである。これにより、ゲノムが完全にアノテーションし直され、新しいタンパク質をコードする何千もの遺伝子やさまざまなRNA種が明らかになった。DNAの反復配列の解析からは、転位因子が同定された。一方でダニに伴う細菌の配列を調べることにより、リケッチアRickettsia buchneriの改善されたゲノムを得ることができた。我々は、Ixodes属のダニゲノムの新規アノテーション、遺伝子モデルとエピゲノム機能、遺伝子ファミリーの拡張、詳細なプロテオームカタログの作成、野生のダニの遺伝的バリアントの解明を行うことにより、ダニゲノムがダニ科学を大きく推進させることを示すことができた。まとめると、本研究はダニ科学の理解やダニ媒介感染症に対する将来的介入に大きな影響を及ぼす重要な遺伝子リソースと生物学的知見を報告するものである。