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エピジェネティクス:親ヒストンが対称的に受け継がれることはエピゲノムの維持と胚性幹細胞のアイデンティティーを支配する

Nature Genetics 55, 9 doi: 10.1038/s41588-023-01476-x

修飾された親ヒストンは、複製中に娘DNA鎖へ対称的に分離されるため、有糸分裂(体細胞分裂)を通じて受け継がれていく。しかし、これがエピゲノムと細胞のアイデンティティーを維持する仕組みについては、まだ明らかにされていない。今回我々は、DNA複製中のヒストンによる情報の伝達が、エピゲノムの忠実性と胚性幹細胞の可塑性を維持していることを示す。MCM2-2A変異細胞での親ヒストンH3–H4の非対称な分離は、ヒストン修飾の有糸分裂を通じての継承を障害し、エピゲノムを全体的に変化させた。この変化によって、誤った抑制的修飾の蓄積が広範に生じるなどし、エピジェネティックなノイズの上昇がもたらされることが示唆された。さらに、反復配列でのH3K9me3の喪失は、二価プロモーター全体で抑制解除とH3K27me3の再分布を引き起こし、これは発生遺伝子の誤発現と相関していた。MCM2-2A変異は、細胞周期全体で細胞状態の動的な移行を妨げ、ナイーブな多能性を増強し、G1期の細胞系譜プライミングを低下させた。さらに、発生能力の低下がもたらされており、これは多能性からの脱出障害と相関していた。まとめると、ヒストン修飾のエピジェネティックな継承により、哺乳類細胞の分化を支える適切にバランスの取れた動的クロマチンの全体像が維持されることが明らかになった。

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