Editorial 砂糖漬けの科学 2016年12月1日 Nature Medicine 22, 12 doi: 10.1038/nm.4250 米国では複数の自治体が11月の大統領選挙に合わせて、砂糖を多く含む飲料への課税導入の是非を問う住民投票を行い、いくつかの自治体で賛成派が多数となった。メキシコや英国などの他の国々でも同様の取り組みが進んでおり、世界保健機関(WHO)もこうした動きを後押ししている。反対派の主張はこの種の税は経済的に公平でないし、雇用に影響が及ぶというもので、賛成派は砂糖の消費が減ることは肥満や糖尿病との闘いの助けになると主張している。タバコ税についても同じような対立があったが、喫煙とがんとの結びつきが科学的に検証され、確立したことで反対運動は壊滅した。砂糖をたっぷり加えた飲み物に対する税でも、タバコの場合と同じく、政策を述べるだけでは大きな支持が得られそうもない。だが、強力な科学的裏付けがあれば話は変わる。各種の糖の代謝経路とそれに関わる臓器への影響、砂糖に替わる人工甘味料の摂取の体への影響、砂糖の摂取についてこれまで動物で行われてきた実験結果が人間でも適用できるかどうかの検証など、解明されていない問題は多い。これらは当然解明すべきだが、選択肢はもう1つある。甘味料の加え方が少ない食物を選ぶことだ。本来、これこそが砂糖税の目指すゴールなのである。現時点で唯一確実なのは、この選択肢の健康への影響をもっとよく理解しておかなくてはならないということだ。 Full text PDF 目次へ戻る