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炎症性腸疾患:オンコスタチンMは腸の炎症を引き起こし、炎症性腸疾患の患者での腫瘍壊死因子中和療法への応答性を予測する
Nature Medicine 23, 5 doi: 10.1038/nm.4307
クローン病(CD)や潰瘍性大腸炎(UC)などの炎症性腸疾患(IBD)は、消化管の複雑な慢性炎症状態で、異常を来したサイトカイン経路によって引き起こされる。抗腫瘍壊死因子α(TNF-α)抗体はIBD治療の中心となっている。しかし、患者の40%までが抗TNF治療薬に非応答性であり、このため、別の治療標的を見つけ出すことは緊急の課題となっている。今回我々は、IBD患者由来の炎症を起こした腸組織が、健常な対照群に比べるとサイトカインであるオンコスタチンM(OSM)とその受容体(OSMR)をずっと多く発現していて、それが組織病理学的な疾患重症度と密接に相関することを示す。OSMRは非造血系、非上皮系の腸ストローマ細胞に発現し、それらはOSMに応答してインターロイキン6(IL-6)、白血球接着因子ICAM1、また好中球、単球およびT細胞を誘引するケモカインなどの多様な炎症誘発性分子を産生する。抗TNF抵抗性腸炎症の動物モデルでOSMを遺伝的に欠失させるか、薬理学的に阻害すると、腸炎は大幅に軽減した。さらに、インフリキシマブおよびゴリムマブの第3相臨床試験の2つのコホートを含むIBD患者200人以上の解析から、治療開始前のOSMの高発現が、抗TNF療法の失敗と強く関連していることが分かった。従ってOSMはIBDのバイオマーカー候補であり、また治療標的となる可能性が考えられる。この結果は抗TNF抵抗性の患者に特に関連するものである。