Review Article
統合失調症の経過を変える:進歩ならびに将来の展望
Nature Reviews Drug Discovery 15, 7 doi: 10.1038/nrd.2016.28
近年、統合失調症の治療では進展が見られないものの、この疾患の遺伝的原因と環境的原因に関する我々の知識はかなり向上しており、こうした原因と異常な神経発生パターンとの関係がよりはっきりとしてきた。このことは、「根治療法(disease-modifying)」戦略によって、症状を単に緩和するのではなく、この消耗性疾患への移行、そして疾患の経過を変えられる可能性を提起している。疾患の経過を変える介入をするのに有望な機会は、特に統合失調症に移行する危険性のある若年者において、精神障害の初回エピソードが出始めた頃である。実際、統合失調症を発症する危険性のある被験者および統合失調症のモデルとなる齧歯類で行われた研究ではいずれも、診断前薬物療法、および心理社会的・認知行動介入によって、精神障害が現れるのを遅らせる、もしくは軽減することが可能だと示唆されている。特に興味深いのは、「ハイブリッド」戦略であり、この戦略は主症状を和らげるとともに、統合失調症や他の精神疾患に移行する危険性を減らす。本総説は、統合失調症の経過を変えようとする試みに固有の課題および機会を広範囲にわたって検討することを目指している。